めっき紹介PLATING
亜鉛めっき-三価クロミックとは?
有害物質である六価クロムが製品廃棄の過程でクロメート皮膜から溶出し土壌汚染、生態系への影響等が懸念され、諸外国の各規制(RoHS指令・ELV指令等)により一部、閾値を設け使用が制限される事になってきた背景から、従来の六価クロメート皮膜のように意図して六価クロムを使用せず、六価クロメートの環境対応代替技術として三価クロミック(三価クロム化成処理皮膜)が一般的に普及されるようになってきました。
三価クロミックは一般的に六価光沢クロメートの代替皮膜としての三価光沢(青色・ユニクロ)タイプ、と六価有色クロメートの代替皮膜としての三価有色(淡黄色等)タイプとに分類されます。
※ 亜鉛めっきの浴種によって三価有色タイプでも青色調を呈するものもあります。
当社における亜鉛めっき-三価クロミックは外観色調を重視した三価クロミック(外観タイプ:青色)、耐食性重視の三価クロミック(耐食タイプ:淡黄色)の2種を亜鉛めっきライン全てに導入し、厳密な管理の基に日々生産を行っております。
各種クロメート皮膜との特性比較
特性項目 | 六価光沢クロメート (ユニクロ) |
六価有色クロメート | 三価クロミック(三価クロム化成処理皮膜) | ||||||||
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色調 |
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耐食性 ※1 | 白色腐食生成物発生 24~48時間 | 白色腐食生成物発生 192~240時間 | 白色腐食生成物発生 外観タイプ:48~96時間 耐食タイプ:72~144時間 | ||||||||
皮膜厚さ | 推定膜厚は 約0.1μm | 推定膜厚は 約0.3~0.5μm | 推定膜厚は 外観タイプ:約0.1μm 耐食タイプ:約0.2~0.5μm |
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防錆作用 | 皮膜中六価クロム溶出の自己修復作用により傷つき等による防食作用はあるが、六価有色クロメートに比べ皮膜が薄いため、耐食性はあまり期待できない。 | 皮膜中六価クロム溶出の自己修復作用により傷つき等による防食作用があり、耐食性が優れている。 | 皮膜中に六価クロムを含まない為、自己修復作用はなく、三価クロミック皮膜中の他元素(別添加によるコロイダルシリカ:主にバレル処理方式に適用)による擬似的自己修復作用はあると言われているが、六価クロメートに比べその効果は弱い。 | ||||||||
耐熱性 | 高温(約70℃以上)雰囲気に弱く、耐食性が期待できない。 | 高温(約70℃以上)雰囲気に弱く、耐食性が期待できない。 | 高温(約200℃まで)耐食性に変化はない。 | ||||||||
色調の経時変化 | 高温高湿の雰囲気で、経時的に外観色調が黄変色する場合がある。 | 基本的に経時による変色はほとんどないが、使用環境により色あせが生じる。 | 高温高湿の雰囲気で、経時的に外観色調が黄変色する場合がある。 | ||||||||
滑り性 | 従来どおり | 従来どおり | 六価光沢・有色クロメートに比べ触感的に劣る | ||||||||
トルク係数 | 従来どおり | 従来どおり | 六価有色クロメートに比べやや高い又はほぼ同等 | ||||||||
電気抵抗 | 1.5~7.5μΩ/cm2 | 15~150μΩ/cm2 | 15~150μΩ/cm2 六価有色クロメートとほぼ同等 |
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塗装下地性 | 従来どおり | 従来どおり | 六価有色クロメートとほぼ同等 | ||||||||
耐擦れ傷付性 | 従来どおり | 従来どおり | 擦れキズに対する防錆力劣る ※2 |
- ※1 当社量産ラインでのテストピースによる(JIS-Z-2371準拠)中性塩水噴霧試験結果より。
- ※2 一般的に三価クロミック皮膜及び六価有色クロメート皮膜はそもそも亜鉛めっき上の化成処理皮膜であるため物理的接触等による作用に対し弱いと言われます。
- 化成処理皮膜の成分は六価光沢・有色クロメート・三価クロミック共に、主に水酸化クロム(三価クロムとして)やその他金属塩などによるコロイド状生成物であり元来擦れキズつきに対しては弱いと言われます。六価有色クロメートの場合、皮膜成分中にクロム酸化合物(六価クロムとして)が多く含有されている事により、キズを修復させる作用〔自己修復作用〕があると言われ、三価クロミックの場合それがないと言われています。
特定化学物質使用状況
特定化学物質 | 化学 物質 |
RoHS指令 該当 |
ELV指令 該当 |
六価光沢クロメート (ユニクロ) |
六価有色クロメート | 三価クロミック(三価クロム化成皮膜) |
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鉛及びその化合物 | Pb | ● | ● | ― | ― | ― |
水銀及びその化合物 | Hg | ● | ● | ― | ― | ― |
カドミウム及びその化合物 | Cd | ● | ● | ― | ― | ― |
六価クロム及びその化合物 | Cr(Ⅵ) | ● | ● | 意図的使用あり | 意図的使用あり | ※3 |
ポリ臭化ビフェニル類 | PBB | ● | ― | ― | ― | ― |
ポリ臭化ジフェニルエーテル類 | PBDE | ● | ― | ― | ― | ― |
※3基準・規格に基づく定量分析が必要となります。
めっき浴種と対応ライン
当社では均一電着性に優れ、毒物(シアン等)を使用しないジンケート浴(ノーシアン浴)を採用しています。
対応ライン | 亜鉛めっき 浴種 |
化成処理種 | 処理可能最大寸法 | 最大荷重 | 備考 |
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自動亜鉛ライン | ジンケート浴 | 三価外観 三価耐食 |
2400L×350W×1200H | 180kg | 自動生産ロボットにより重厚長大品の量産処理も可能。 |
回転亜鉛ライン | ジンケート浴 | 三価外観 三価耐食 |
(40L×40W×40H) ボルトナット等小物のみ対応 |
25~100kg | バレル処理のため大量生産可能。ナット類/プレス品対応可。 |
適応素材(参考)
めっき種 | 対象素材 | ||||
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鉄 | 鋳物 | 銅/真鍮 | SUS系 | アルミ系 | |
亜鉛めっき-三価クロミック | ◎ | △ | ○ | △ | △ |
◎:容易、○:比較的容易、△:前処理や特殊工程が必要