めっき紹介PLATING
スズ-コバルト合金めっきとは?
スズ-コバルト合金めっきはクロムめっきの色調と非常に似ているため、六価クロムフリー(皮膜不含有/製造工程内不使用)に対応できる装飾クロムめっきの代替めっき皮膜として幅広く用いられております。また、装飾クロムめっきに比べ均一電着性・被覆力が優れている為、複雑な形状品に適しています。
合金組成はスズ80~85%、コバルト15~20%であり、皮膜厚さは装飾クロムめっき同様0.1~0.5μm程度の薄膜保護層です。
下地めっきには装飾クロムめっき同様、銅めっき及び/又は各種ニッケルめっき数μmから数十μmを行います。
分野 | 目的 | 用途例 |
---|---|---|
装飾分野 | 耐変色性・耐食性向上・美観光沢付与 | 自動車外装部品・水洗金具・照明器具等 |
その他 | 光反射性、熱反射性、耐薬品性等 |
スズ-コバルト合金めっきと装飾クロムめっきとの特性比較
特性項目 | スズ-コバルト合金めっき | 装飾クロムめっき |
---|---|---|
色調 | クロムよりもやや青味あり | 白金属光沢 |
耐硝酸 | 良好 | 良好 |
耐硫酸 | かなり良好 | かなり良好 |
耐塩酸 | 溶解 | 溶解 |
耐変色性 | 良好 | 良好 |
硬度 | Hv400~500 | Hv900 |
両皮膜とも薄膜(0.1~0.5μm)であるため、下地めっき(銅・ニッケル等)や素材の硬度に依存します。 | ||
耐摩耗性 | クロムより劣る | 良好 |
両皮膜とも薄膜(0.1~0.5μm)であるため、下地めっき(銅・ニッケル等)や素材の硬度に依存します。 | ||
はんだ付け性 | フラックスを用いて可能 | 不可 |
磁性 | 非磁性 | 非磁性 |
均一電着性注1 | 良好 | 非常に劣る |
被覆力注2 | 良好 | 非常に劣る |
※ ベントカソード試験での被覆力の差を下記別表1をご参照下さい。 | ||
耐食性 | 良好 | 良好 |
※装飾クロムめっきの下地めっきとして無光沢/光沢ニッケルめっきを適宜被覆させ多層化・厚膜化を図る事により、耐食性能は向上します。 詳細は下記別表2をご参照下さい。 |
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対象素材 | 下地に銅及び/又は各種ニッケルめっきを行いますので、基本的には素材種への依存はありません。 | |
外観 | 外観は磨き(バフ、#200)、梨地(液体ホーニング、乾式ホーニング)、サテン仕上げ等の各種選択的組合せが可能です。 |
- 注1.均一電着性とは電流分布による膜厚のバラつきがいかに均一かを意味します。
- 注2.被覆力とはめっきのつき回り範囲の大きさを意味します。
別表1.スズ-コバルト合金めっきと装飾クロムめっきとの被覆力比較
両浴の被覆力の違いを、ベントカソードを用いた試験にて実証します。
ベントカソード試験とは・・・
意図的に低電流密度部が生じる様な複雑な形状品へめっきを施す事で、各部位へのめっき析出範囲(被覆力=つき回り)を検証する試験を意味します。
左記図はベントカソードを側面から見た状態図です。
電気の通じにくい奥まった折り曲げ内角部に生じる低電流密度部はG-H面<B-C-D面<J-K-L面の順でめっき被覆が困難となり、検証はこの3面にて行いました。
観察面 | スズ-コバルト合金めっき | 装飾クロムめっき |
---|---|---|
G-H面 | ||
B-C-D面 | ||
J-K-L面 |
装飾クロムめっきサンプルの折り曲げ部位に観られる青色・茶色部が無めっき部となります。
上記試験結果より、スズ-コバルト合金めっきサンプルには無めっき部は確認されない事から、スズ-コバルト合金めっきの被覆力が装飾クロムめっきよりも優れている事が実証されました。
別表2.スズ-コバルト合金めっきと装飾クロムめっきとの耐食性比較
下記表に下地ニッケルめっきと各上層めっきの組合せによる耐食性能の違いを参考データとして列記します。下地ニッケルめっきを適切に行えば、装飾クロムめっきと同等、もしくはほぼ同等の耐食性を示します。
下地めっき | 上層めっき | レイティングナンバー 注3 | ||||
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無光沢ニッケル(μm) | 光沢ニッケル(μm) | スズ-コバルト(μm) | 装飾クロム(μm) | 16h | 32h | 48h |
10 | 0.2 | 9 | 7 | 3 | ||
10 | 0.2 | 9.5 | 8 | 5 | ||
20 | 0.2 | 9.5 | 8 | 4 | ||
20 | 0.2 | 10 | 8 | 5 | ||
6 | 4 | 0.2 | 10 | 9 | 9 | |
6 | 4 | 0.2 | 10 | 10 | 9 | |
12 | 8 | 0.2 | 10 | 10 | 10 | |
12 | 8 | 0.2 | 10 | 10 | 10 |
〔「めっき技術ガイド」より引用〕
- ※ 評価方法:キャス試験
- ※ 注3.レイティングナンバー法とは、JIS-Z-2371で規格化された塩水噴霧試験・キャス試験等の腐食促進試験の判定評価に用いられ、腐食度合いを面積比率(腐食面積/試料有効面積)で算出する方法です。数字が小さくなるほど、腐食面積が多くなる事を意味します。(レイティングナンバー10=腐食面積率0%=腐食なし)
めっき浴種と対応ライン
一般的なスズ-コバルト合金めっきの浴種には2価スズを用いたピロ燐酸浴と、4価スズを用いたスタネート浴がありますが、当社では弱アルカリ性で作業環境が良く、また色調が安定して得られるピロ燐酸浴を採用しております。
対応ライン | 浴種 | 処理可能最大寸法 | 最大荷重 | 備考 |
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自動装飾ライン | ピロ燐酸浴 | 2400L×350W×1200H | 180kg | 自動生産ロボットにより重厚長大品の量産処理も可能。 |
精密装飾ライン | ピロ燐酸浴 | 400L×250W×500H | 10kg | 手作業によるきめ細かな作業が可能。 |